視察ツアー

地域と住人がつながるまちづくりを学ぶー野きろの杜視察ツアー

地域と住人がつながるまちづくりを学ぶー野きろの杜視察ツアー
先日開催された「野きろの杜」視察ツアーでは、新しいまちづくりのあり方について多くを学ぶ機会となりました。この視察ツアーは、街並みのデザインや地域との連携、素材活用の工夫に至るまで、幅広い学びを提供する内容でした。本記事では、視察物件の概要、講演や発表の内容、そして特に印象的だったポイントを整理してお届けします。

視察:株式会社石田伸一建築事務所

1979年生まれ、十日町市出身。2000年に新潟市に拠点を置くビルダーに新卒で入社し、役員を経て2018年に退社。同年、株式会社石田伸一建築事務所を立ち上げる。
新潟県内の注文住宅の設計の他、企画住宅の提案、県外のビルダーのコンサルティング、出身地である魚沼地域産の杉「魚沼杉」のブランディングや流通促進、海外での住宅設計など幅広いプロジェクトを手掛ける。

①視察物件の紹介:野きろの杜

「野きろの杜」は、スノーピークをはじめとする地元設計士、不動産会社、工務店が手掛けた6,600坪以上の広大な分譲地です。34区画の分譲住宅を中心に、スノーピークショップやゲストハウス、イベントスペース、高性能賃貸住宅など、多彩な施設が点在しています。

この分譲地の最大の特徴は、**「地域住民と住人をつなぐ仕組み」**です。以下のような取り組みが視察中に紹介されました:

 

  • 住人同士の交流を促すキャンプ用品の提供: 全住人にスノーピーク製品を提供し、キャンプイベントを開催。住人間の絆が自然と深まる仕掛けです。
  • 地域住民も利用可能な広場と施設: BBQセットをレンタルできる仕組みが整い、休日には地域の住民も訪れるコミュニティスペースとなっています。
  • 統一感のある街並み: 外観デザインの厳格なルールや電柱の地中化によって、美しい景観が保たれています。

「野きろの杜」は単なる住宅地ではなく、住人と地域が共に成長するまちとして設計されている点が印象的でした。

②石田設計士の講演:まちづくりに込めた思い

視察中には、「野きろの杜」の設計とプロデュースを手掛けた石田設計士による講演が行われました。石田さんは、林業、設計、工務店経営と、家づくりの川上から川下までを一貫して手掛けている稀有な存在です。今回の講演では、以下のテーマが特に参加者の関心を引きました。

 

黒い杉材の活用で生み出した新しい価値

通常は商品価値がないとされる黒く変色した杉材を、「かっこいい」と評価し、内装材や外装材に活用したエピソードが語られました。結果的に、廃材が意匠性の高い素材として活用され、製材所の年間売上を8,000万円から1億2,000万円にまで引き上げたとのこと。この挑戦は、石田設計士が川上から川下までのプロセスを熟知していたからこそ実現できたと感じました。

 

地域住民とのつながりを重視したまちづくり

「野きろの杜」では、地域住民との交流を促進する仕掛けを徹底しています。13以上の自治会に挨拶を行い、地域イベントを積極的に実施することで、住人と地域の絆を深めています。「まちは住人だけのものではなく、地域に愛されるべき」という石田設計士の考え方が、このプロジェクトの成功を支えていると感じました。

③SUMUSからの発表:印象に残った3つのポイント

視察ツアーの最後には、SUMUSから今回の視察を通じて学んだことが共有され、議論が行われました。その中で、特に印象的だった3つのポイントを以下に整理します。

 

①コンセプト設計の重要性

「野きろの杜」は、土地の仕入れ段階から明確なコンセプトに基づいて設計されています。たとえば、キャンプ文化を取り入れることで住人同士の交流を促すと同時に、地域住民にも親しみやすいまちを作り上げています。こうした明確なコンセプト設計は、分譲地の魅力を高めるだけでなく、地域との信頼関係を築く鍵であると再認識しました。

 

②素材活用の革新性

石田設計士による黒い杉材の活用事例は、固定観念を捨てることで新しい価値を生み出す好例でした。分譲地開発においても、「無理だ」と考えるのではなく、「どうやれば実現できるか」を考える姿勢が必要だと感じました。

 

③街並みと地域コミュニティの提供

「野きろの杜」の成功は、住人同士のコミュニケーションだけでなく、地域住民とのつながりを重視した仕組みづくりにあります。共益管理費を導入し、街の維持やイベント活動を継続的に支える仕組みは、他の分譲地でも参考になる点です。

まとめ:学びを次のステップへ

「野きろの杜」視察ツアーを通じて、コンセプト分譲の可能性と課題について多くを学ぶことができました。単なる住宅販売ではなく、地域全体とつながるまちづくりを目指す姿勢は、これからの住宅業界に必要な方向性を示しています。

また、石田設計士の「固定観念を捨て、新しい価値を創造する」という姿勢は、今後の仕事に大きな影響を与えるものでした。この視察で得た学びを、参加者一人ひとりが自社の取り組みにどう活かしていくかが問われます。

このような貴重な機会を企画してくださった皆様に心より感謝申し上げます。次回もぜひ参加し、さらなる知見を深めていきたいと思います!

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